人生の相 020730

人生読本から
「人生の相」 ~無量寿経より~
世の人々は、人情が薄く、親しみ愛することを知らず、
つまらぬ事を争い合い激しい悪と苦しみの中で、
ようやくその日その日を過ごしている。
すべて皆金銭のことのみに苦しみ、無ければ無いで苦しみ、
有れば有るで苦しみ、欲のために使われて安らかな時がない。


富めるものは、すべて有るものに執着して尚もむさぼり憂い
苦しみ、貧しいものは欲しい欲しいの思いに焼かれている。
やがて死がやってくれば、ただ一人で遠く遠く行かねばならぬことを
考えてもみない。人は互いに敬い愛し施しあわねばならないのに、
わずかな利害で互いに憎しみ争うことのみに疲れはてている。
人はこの愛欲の世界に独り生れ、独り死し、独りで来て独り去る。
誰も代わって受けてくれるものはなく、自らそれに当らねばならぬ。
厳かな因果の道理によって、その報いの定められた所へ
行かねばならぬ。健やかな時に道を求めて迷いを
のがれねばならない。
道を求めることを他にして、何をたのみとし、何の楽しみが
あるというのであろうか。
真に世間のことは慌ただしく過ぎ去り頼りとすべきものは
一つもない。
新訳仏教聖典