人生の秘訣
電車などに乗った際、かりに途中で何か事が起こり、七、八割の乗客が立ち上がって、窓から外をのぞくような場合にも、じっと座っていられるような人間でなければ、大事はできません。もう一つの例を申せば、橋の下に何かの事故があって、黒山を築くほどの人だかりがしていても、それには見向きもしないで、平気でスタスタとその橋が渡れるようでなければ、大事は出来ません。こういうことは、何でもないことのようでありながら、実は「人生の秘訣」といってよいのです。前に申すような事柄に、動かされるような人間はかれこれいってみたとて、結局、真の頼みにはなりません。
人間は百人の中九十九人、否千人中九百九十九人までが引きずられても、自分一人は引きずられぬという処がなくては大事はできません。つまりそれでなくては、百人中九十九人、否千人中九百九十九人までの人間のやらないことを、われ一人進んでやってのけるという、真の力は出ようがないのです。