再録 随想 伊路波村から117〜師と畏友

四日市のUさんからひさしぶりに、ひとり新聞
「むーびーず」が届いた。長く中断していた。

最近四日市へ彼が生涯の師とこころに決めている、はがき道の
坂田さんが彼のために駆けつけてくれた。
そしてひとり新聞の講習会のようなものをされた。
さらに「どうしても行きたいです」といっていた彼は去る10日、おそらく
一人で広島のもう一人の尊敬する川原作太郎さんを訪ねているはず。

そして12日久々の「むーびーず」が届いたのだった。
Uさんは一見ひょうきんな人と目にうつる。

そんな彼だが、幼い日に父親を亡くしている。
父親のなきがらをリヤカーに乗せ、前をお母さんが
後ろを幼い彼が押して病院へ行ったと聴いた。

そんな彼は高校生の頃から貯金をしつづける。
会社で働き、結婚するかしないかで会社を辞める。

好きな映画や音楽の店を開業。事業資金の元手は
高校生から貯めた一千万円をこえる貯金だった。

開業してから16年が経った。
その間に坂田道信さんという生涯の師にであうことになる。
初めて師の姿を見ただけでボロボロと涙がでたと聴く。
生涯で魂の邂逅ともいうべき師に会える人は幸いといえるだろう。
そんなに出会えるものではないから。

そして彼の友達鈴鹿のBさんが結婚した。

結婚披露宴の席上で新郎のBさんはUさんを
マイクで紹介しながら感極まっていた。

「僕が設計事務所で独立したいと言ったら、このUさんは
そしたら一番最初のお客にして と言ってくれました。
その言葉で独立する自信に——」

Uさんは幼い頃からの母と子のふたり暮らし。
人の痛みや不安が分かる人になっていったのだろう。

素晴らしい師と得難い友人に包まれてUさんは幸せです。
彼は約束していた人生を立派に歩いています。

「そんなんちがう  そんなんちがう」Uさんの照れる声が
聞こえてきます。

いつまでも友達でありますように。