人間の真の強さというものは、人生のどん底から立ち上がってくるところに、初めて得られるものです。人間もどん底から立ち上がってきた人でなければ、真に偉大な人とは言えないでしょう。
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死生の悟りと言っても別にはなくて、お互いにこの生ある間を、真に命がけで生きるという外ないわけであります。これ先に生に徹することが、やがてまた死生を超える道だと申したゆえんであります。そして死ぬとは結局、生まれる以前の故郷へ帰ることだといえましょう。ですからわれわれは、この世にある間は自分の全力を挙げてこの世の務めを尽くす。これやがてこの世を去る唯一の秘訣でありましょう。いざという時に心残りのない道、これ真に安んじて死に得る唯一の道であります。
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人間はこの肉体をもっている限りは、煩悩の徹底的根切は不可能である。そしてこの一事が、身根に徹して分かることこそ真の救いといってよかろう。
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総じてその実質が同じ程度の偉大さであるならば、その人の社会的位置が低ければ低いほど、後世におけるその感化影響の力は、大きいと言えましょう。
世間の人々は、多くはこの道理を知らないで、ただ位置さえ高ければ、それだけその影響力も広く及ぶように考えがちですが、それはただ物事の上面だけを見ているにすぎないのです。