奥の院通信から R4 7/28 「あるオデッサの悲劇」

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事件は2014年5月2日に起きた。発端は、ウクライナ南部オデッサ市内で起きた親欧米派(ディープステートの手先)のデモ隊と、ロシア系住民とのあいだで起きた暴動である。

 この衝突で、石や火炎瓶が投げられ、少なくとも4人が死亡した。さらに、親ロシア派住民が立てこもった労働組合の建物が放火され、46人が死亡、200人以上が負傷した。イタルタス通信(ロシアの国営通信社)やロシア・トゥデイは、この放火がウクライナ民族主義の過激派右派セクターによるものだと伝えている。

 2014/5/2 イタルタス「オデッサの労働組合の建物が過激派右派セクターによって放火され、38人が焼死」
 「オデッサの労働組合の建物で生きたまま多くの人が焼き殺された(2014年5月2日)」
 「キエフと右派セクターによるオデッサ水晶の夜」などと報じられた。

 事件の翌日の5月3日、 ロシア・トゥデイも、「ウクライナのオデッサで、右派セクターが労働組合の建物に火をつけ、31人が死亡」と報じた。「彼らはバットやチェーンで私たちを殴ったのはオデッサの反政府活動家」とも報じている。その冒頭、「21世紀とは思えない」とあえて記した。ひとつは、このオデッサという街には「ポグロム」という名称で呼ばれる、過去の忌まわしいユダヤ人虐殺の記憶が刻まれているから、「反ユダヤ」を持ち出せば良い。

 死亡者のうちの多くが一酸化炭素中毒によるものであった。建物から逃げようとして窓から飛び降りて死亡した人もおり、また、窓から飛び降りて逃げた人々を右派セクターが取り囲んで殴った。
 
 反政府活動家の一人が、ロシア・トゥデイによるインタビューで放火の様子を語っている。それによると、「右派セクターが労働組合の建物を取り囲み、閃光弾や催涙ガスを使って攻撃した。そして、彼が二階の窓から飛び降りて逃げたとき、右派セクターによってバットやチェーンで殴られ負傷した」と語っている。

 18世紀でも、19世紀でも、20世紀でもなく、この21世紀に過去の悪夢を想起させる事件が、このオデッサで起きたということである。今回の事件がユダヤ人だけを標的にしたわけではないにせよ、やらかしたのは名うての反ユダヤ主義的なウクライナ・ナショナリストの右派セクターである。悪夢の記憶が蘇らないわけがない。
 アメリカのケリー米国務長官が別の事件を指して同様の表現を用いた。それも反ユダヤ主義に深く関わる表現である。

 この衝突の起こる数日前の4月29日、オンラインジャーナル「ストラテジック・カルチャー・ファンデーション」のアレクサンダー・ドネツキー氏が、なぜオデッサで新政権に対する抗議運動が起こっているのかを論じている。
 昔、第二次世界大戦が起こると、他の民族の住民が逃げ出し、オデッサは逃げ遅れたユダヤ人たちが町の人口の80%から90%を占めるに至ったが、その多くがナチスやウクライナの民族主義者によって殺された。ユダヤ人人口は激減したが、それでもオデッサは今なおユダヤ人の人口比が高い。そのため、スボヴォダ党(ウクライナの民族主義政党)のような、反ユダヤ主義者が含まれるキエフの新政権は、彼らにとって受け入れ難いものだという。論者はすぐに反ユダヤと結びつける。

 ウクライナの東部・南部での情勢の悪化を受け、国連安全保障理事会の緊急会合が2日に開かれた。この席でロシアのヴィタリー・チュルキン国連大使は次のように述べた。世界の首脳に訴えた。

 「私たちは非常に当惑している。ウクライナ南部の都市オデッサからの情報によると、”右派セクター”の暴漢たちが労働組合の建物に押し入り、38人の人々を焼き殺したという。こうした行為は、ナチの犯罪を連想させる。ウクライナのウルトラ・ナショナリストたちは、ナチからイデオロギーのインスピレーションを得ている。
 私たちは、アメリカのジョン・ケリー国務長官、ドイツのフランク=ヴァルター・シュタインマイアー外相、フランスのローラン・ファビウス外相、イギリスのウィリアム・ヘイグ外相に、ロシアとともに明確にこの野蛮な行為を非難するよう求める」と。

 しかし、世界の反応は極めて鈍かった。
 世界のメディアは、なぜか全くこれを報じなかった。今回起きたウクライナ紛争の本質がここに隠されている。ディープステートがやらせている紛争であり、彼らは事件の本質を隠しておきたい、しかし、紛争は広げなければいけない。だから、事件を起こしては、それを報じないで事件の拡大だけを求める。ウクライナで「ロシア系住民に対するジェノサイドが起きている」というロシアの主張の一例がこの事件である。しかし、メディアはこうしたロシアの言い分を決して発信しない、させない。彼らにとってはロシアは「悪者」でなければならないのである。