偉人の力の源泉
人間の力にはそれぞれ限度があるとも
言えますが、同時にまた他面からは、際限が
ないとも言えるのです。
それはちょうど井戸水みたいなもので、
なるほど一方には、水のよく出る井戸もあれば、
また出のよくない井戸もあると言えましょう。
しかし実際には、水をかい出して、もう
出なくなったと思っても、しばらくすれば
またちゃんと元のように溜まっているのです。
人間の力もまあそんなもので、もうこれ以上は
やれないと思っても、その人にして真に精進の
歩みを怠らなければ、次つぎと先が開けてくる
ものであります。
一方では際限があるようでありながら、
しかも実際には限りのないのが、人が天から
うけた力というものですから、そこでとことんまで
出し切るには、一体どうしたらよいかという
ことが、問題になるわけです。
そのためには、一体いかなることから着手
したらよいかというに、それには何と言っても
まず偉人の伝記を読むがよいでしょう。そして
進んでは、その偉人をして、そのような
一生をたどらせた、真の内面的動力はいかなる
ものであったかを、突き止めるということでしょう。
かくして偉人の書物を繰り返して読む
ということは、ちょうど井戸水を、繰り返し繰り返し、
汲み上げるにも似ていると言えましょう。
ところがどうも現在の学校教育では、
学問の根本眼目が力強く示されていない
嫌いがあるのです。
それ故幾年どころか、十幾年という永い間
学校教育を受けても、人間に真の力強さが
出て来ないのです。