森 信三 運命をひらく 365の金言 26 「人生の意義を即答できるか」

人生の意義を即答できるか

 「人生の意義いかん」という問題に、
もし正面から四つに取り組んで考えるとしたら、
たとえ教養があり、さらにはある程度学問の
ある人々でも、これはなかなか難しく、
かつ、やっかいな問題といってよいでしょう。
それというのも、仮に諸君たちがこの問題を
ひっさげて、社会的にもかなり名を知られているような
学者とか、思想家などに会った際、多少
失礼かもしれませんが、試みにこの大問題を
投げかけてみられるとよいでしょう。

 「先生!われわれ人間は、この人生をいったい
何のために生きると考えたらよいでしょうか」と。
その際、もし何らのためらいもなく、言下に即答する
人でしたら、その人のいわれる事柄のいかんは
しばらく別としても、その人は、相当の人物と
考えてよかろうと思います。

 それというのも、卒然と相手からこうした人生の
根本問題を投げかけられた際、一瞬のためらいも示さず、
言下に即答ができるということは、その人の学問
なり思想なりが、十分身について、いわば血肉化せられて
いるからだといってよいからです。否、
さらには端的に申せば、結局、それはその人自身が、
常に自分の生き方を問題として、「この二度とない
人生をいかに生きることが真実であるか」という
人生の根本問題に対して、常に自問自答している
のでなければ、そうしたとっさの際に、
このような大問題に、たやすく即答できるものでは
ないからです。