随想 伊路波村から108〜川奈ホテル

毎年この時期に開催される、プロゴルフ競技の
フジサンケイクラシック。

今年の優勝者はアメリカのハミルトン選手だった。
テレビ画面の中での優勝インタビュー。
彼は何度も胸を詰まらせていた。
5年ぶりの優勝。

奥さんと娘さんがアメリカへ帰り、
単身赴任のかたちで、日本ツアーに参戦している。

長い間勝利がなかったこと、
そして家族と離れて暮らす孤独感にたえた
歓びと感激だったのだろうか。

選手はこのフジサンケイクラシックの時は
ほとんどが クラブハウスでもある「川奈ホテル」に宿泊する。
「川奈ホテル」はゴルファーなら一度は宿泊して、
ゴルフをしたいと夢見る場所。

このホテルには楽しい思い出がある。
今から15年ほど前のこと。4人のゴルフ仲間がいた。
4人は仲がとてもよくて、月に一度はいっしょにプレーした。
そして年に一度はゴルフ旅行で宿泊2ラウンド。

徹底的に足の引っ張り合い口撃をしてチョコレートを
奪い合う、楽しい仲間たち。

最初に70台を出した人をみんなでクラブ(飲み屋さん)に
連れて行こう。とかシングルになったらお祝いしよう とか
約束していた。

4人がみんな100をきるように丁度同じ時期になった。
いつかは川奈へ。 夢が叶った。

川奈ホテルはさすがにクラシックな建物。
部屋も落ち着きのある白壁の部屋。
そして到着の日、初ラウンド。
さすがに川奈コースは難しい。
ケチョンケチョンのスコアで一日目はみんなに
チョコレートも総とられとなった。

夕食はとてもレストランで食べる余裕がないので
町にでて、地元の海のさちでたくさん飲んだ。
ゴルフの話はキリがなく、楽しい。

ひそかにみんなが良いスコアと勝つことを狙って
川奈ホテルで就寝。

翌日、意気洋々とラウンドにでかける。
川奈の風は聞いていた以上。

逆風のテイーグランドでのナイスドライバーが100メートル。
ハーフを終えて昼食。レストランもクラシック。

給仕のボーイさんが真っ白な正装、蝶ネクタイすがたで、
3人直立して我々の食事を見守る。
客は我々一組だけ。

カレーがたしか2500円くらい、ビールは小びんで1200円だったか。
ドキドキしながらみんながカレーを注文して、楽しみのビールを小びんで飲む。
追加をしようとすると、みんなの冷たい視線。(ワリカンだから)

ボーイさんたちの姿がカレーをのどに通さない。
クスクス笑いながらの食事。 川奈はすごい。

昼からの最後のハーフラウンドも惨めなスコアで終了。
結局は負け頭となってしまった。

伊豆からの帰路、二日間の話題に花が咲く。
ゴルフをし始めて一番楽しいのが100を行ったり来たりする頃。
そのもっとも楽しい時期を、気のおけない仲間と川奈へ
行けた歓び。

そのうちの一人はもうこの世にいない。
若くして病に倒れた。

そして川奈から7年後、一人がシングルになり、
残りの2人はともに70台をだした。

そして自分はゴルフをぴったりとやめた。
もう昔のゴルフ仲間との付き合いはない。
フジサンケイクラシックは四人の仲間の思い出である。