未到の領野をゆくものは
地図もなければ 相談者もない
競争相手もないが 目標もない
あたりは茫々の広野であったり
峻立の山であったり
絶壁の谷であったりする
しかし何遍も攀(よ)じながら往復し
まず自分の通れるだけの小径をつけ
それを足がかりに誰でも通れる道をつくる
そして新たな所を開拓し
豊富な土地をつくって命名し
そのうえ誰にも赴く興味をひくように
馴染をもたせなければ
自分がひとり紛れこんだのでしかないからだ
先をゆくものは
ただ自らの磁石を方向としつつ
自らのいちに溢れくる生命力だけで進む
だからいつその中途でたおれても
彼は自分の到った地点を知っている
内山 興正 師