再録 随想 伊路波村から33~イルカのショー

イタリア村がなくなって 少し寂しい感じの名古屋港。
その名古屋港には水族館がある。

中日新聞に「マイルカのあかちゃんを見学する集い」が日に2回
あるというので娘と一緒に行った。

水族館があくと 子どもやカップルが次々に入館。
入り口には大きなイルカの水槽が3つ4つある。

壁の隅には看板があって「マイルカのあかちゃん見学」と
書いてある。第一回目は30分後。

並んだ めずらしく。(笑)
誰かのためだったらできる。

並んでいる間に 交代でイルカの水槽を見に行く。
「テレパシーを送ると寄ってくるよ。」と娘に言う。
ほんと~??」と眉唾物の父を見る娘。

だがほんとに寄ってくるのを遠くでみて
娘は不思議な顔をしていた。

さて見学の時間がきて 整理の札が配られる。
先着30名さまは私たちのすぐ後ろで切れた。
「ごめんね・・・」と心で詫びる。

ぞろぞろと30人が 一般の客が入れない場所に移動する。
10人ずつがかわるがわるに飼育を観察する小さな部屋に入る。
私たちは最後のグループ。

待っている間に何を思ったか 係りのおじさんが
「ちょっと時間があるので ちょうどその娘さんがいるドアの
後ろの部屋について説明します。」と話し出す。
娘は恥ずかしそう。(笑)

そこは天皇陛下がみえたときに使った部屋で
中に入ると 座って硝子ごしにイルカを観察できるように
なっているとか うんぬんくんぬんと うんちくを述べられた。
笑が出て 一同が一気になごむ。
いよいよわたしたちの番が来た。

部屋に入ると あかちゃんの生態を記録する係りの
おねえさんがじっと記録をしている。

「アッ! あかちゃんがおっぱい飲んだ!」と子どもの歓声。

マイルカの赤ちゃんは お母さんイルカにくっついて
泳いで 何度もおっぱいに吸い付くが ほんの
一瞬で吸っては 泳ぎを繰り返す。

かわいい・・・・。

みんなが満足して 解散。
さてごはんだ!と 少し離れた別の館へと移動。
お魚を見ながらお食事ができるというお店へ行ってみたが
40分待ち。 あきらめて屋上のイルカショーのステージに向かう。
ラッキーなことにステージのまん前の場所に席をいただく。
会場は いっぱいの人。

私は還暦にして 初めてのイルカショーなのだ。
(自然のイルカの群れは ハワイ島で発見。これもラッキーだった。)

なんだかワクワク。
大きなプールでイルカさんたちの演技が始まる。
イルカが何故眼隠しされても ワッパを見つけてこれるのかがわかった時は
やっぱり人間でも物体でも 固有の振動数をもっていることが
理解できた。

輪くぐり ワッパ探し ジャンプや挨拶
集団で物凄いスピードで巨大なプールをあっという間に
周回しジャンプするイルカさんたち 私は不覚にも
泣いてしまっていた。そしてほんとに感動していた。
きっと 大昔イルカだったんだと思う。(笑)

娘は幾度も見たことがあるらしく 感動する父がおかしいのか
「よかったね」と言うばかり。

イルカのあかちゃんを見て イルカショーを見たら
本日の予定は終了だ。

港のレストランで船と港をみながらランチした。
すぐ前に 老夫婦がランチしてた。
彼らはまったくの無音。

こちらはガチャガチャとナイフフォークの音。
「ごめんね」とまた詫びた。(笑)

帰宅しようと駐車場に出向くと
所在なさげな一人の女性が 立ったまま柱の陰でウロウロしてる。

たくさんの人々が行きかう場所に近づくことができずに
ただただ立って逡巡する女性。

「あの人 どうしたんだろう・・・・・。」と娘。

どうすることもできない。
悲しい現実を最後に見る。
私は複雑な気持ちで 水族館を後にした。