割りばしの墓標 R3 7/16

中学生のころ茶色い雑種猫の「マミ」を飼っていた。

家に帰って戸をガラガラと開けると、何かしら「マミ~~」といって
寄ってくる気がしたからその名前。

でもマミはある朝犬と喧嘩したのか
はらわたをえぐられて家の前の道で横たわっていた。
母さんによるとマミは身ごもっていたそう。

母さんは悲しむこともせず、淡々とマミを片付けて
近くの空き地に埋めに行こうと言った。

こちらはマミの姿を見ることができないほど
見るのが嫌だった。
血がだめなのは今も変わらない。

その時、女の人は血に強いなあと
漠然と思った。

母さんと一緒に二人きりでマミを土に埋める。
マミが身重でなかったら、犬なんかに負けなかったのにと
くやしいマミの気持ちを思った。

なんでか父親となって次女の名前を「真由美」とする。
そして呼び名は今も「マミ」。

その後豊山村に移ってから犬の「ジュリー」を
飼った。ジュリーは美男子の白い雑種犬。

よく吠えて平屋の番犬のお役をよく果たした。

まだ予防注射もしていなかったためか、
狂犬病のような症状となり近寄るとものすごく
うなって怒る。
何も食べずただ横たわっていて、近づくと
やはり怒る、を一週間ほど続けた後、
また朝見ると硬くなって死んでいた。

この時も埋葬責任者は母さんだった。
まだ近くに土がいっぱいの場所がある時代
埋葬地には困らない。

そして今の中村区に越してきて、今度は「マミ」の
二匹のウサギを預かった。
茶の「モナカ」と黒の「ショコラ」。

やはり次々に死んでいった。

「もう動物はいらん!」と思っていたのに。
品川の三女の願いで今の犬の「ポム」が名古屋に来た。
今10歳。
人なら60歳の年齢。

「絶対面倒見ない、死んだら悲しいから」といった
自分が、やっぱりこうなる散歩役。

そのポムさんと今朝の散歩中に町のわずかな植込みの
ちいさな土の場所にあった割りばしの墓標。

幼い子の字で割りばしに「ケイリーありがとう」

何か小さな動物の名前かな。?

その場を一旦離れてみたが気になってポムに
「待て!」で写真撮影。

そしたら以前飼っていた猫のマミ、犬のジュリー、ウサギの
モナカとショコラの思い出が一挙に押し寄せてきた。

「ケイリーありがとう」か、とつぶやいて、
みんなにありがとうと心の中で言ってみた。

そしていま生かされている「ポム」さんが急に
愛しくなって、まだ残っている腰のくぼみを
ほめて触ってやったら、ゴロゴロと嬉しそうにしていた。

暑くなって、蝉も元気な早朝のできごと。