森信三先生の言葉 27~人間は生まれると同時に・・・

 人間は生まれると同時に、自覚の始まるわけではない。人間が真の自覚を発するのは、人生の三分の一どころか二分の一あたりまで生きないと、できないことのようです。そしてここに、人間の根本的な有限性があるわけです。
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  焼き芋は、火が通らないとふっくらと焼けない。人間も苦労しないと「アク」が抜けません。同一のものでも、苦労して得たのではないと、その物の真の値打ちは分かりません。

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 自分の「血」と「育ち」における卑しさが自分の言動のどこに、いかなる形態をとって現れているかということを、まず知らねばならぬと思うのです。
 実際に気品というものは、人間の修養上、最大の難物と言ってよいからです。それ以外の事柄は、大体生涯をかければ
必ずできるものですが、この気品という問題だけは、容易にそうとは言えないのです。

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 つまり人間というものは、教えの光に照らされなければ、たとえ幾年、否、時としては十数年の永きに交わっても、この点に対する深い自覚には至り難いものであります。けだし教えの光に照らされるということは、つまり自分の醜さが分かり出すということだからです。