なにか考え事をしている時には、あるはずの世の中を
見たり、感じたりすることはない。
「我想う ゆえに我あり」と哲学者の有名な言葉。
私たちは思わなければ、私たちを認識せずに、
私という個人は全体となって、我はないのでしょうか。
「私なんて どうしようもない人間---」
食卓で思いの淵に沈む娘に知らず語っていました。
「天皇陛下がどんなに偉くたって
あんたになることはできんよ。
同じように あんたは 白川公園の無宿の人にも
なれはしない。
人間は誰にもとってかわることができんよ。
無宿の人も、天皇陛下も あんたも
みんなかわれないんだよ。
みんなかけがえのないのが人間一人ひとり。
誰だって すごいし 誰だって えらいんだ。」
私たちのいる空間を 同時に同じ場所に他の人や
ものが しめることはできない。
すべての存在が何一つ かけがえのない存在だとしたら、
みんな必要でささえあっている。
語るほうの僕が涙ぐんでいた。