森 信三 運命をひらく 365の金言 38 「人と禽獣との違い」

人と禽獣との違い

 われわれ人間は、自己に対する反省と自覚を欠く間は、この天地大宇宙の間にありながら、しかも天地人生の道を明らかにし得ないのであります。かくしてわれわれ人間は、自己がこの世に生まれ出た真の意義を知り、自らの使命を自覚して、いささかでもこれを実現しようとするところに、人と禽獣の真の本質的な違いがあると言うべきでしょう。

 人間以外のものには、自分の使命を自覚するものが一つとしてあり得ないことは、今さら言うまでもないことです。さればそれら草木禽獣の類は、自らの自覚によって自己の本来の意義を実現するものではなくて、われわれ人間の助けを借りて、初めてその本質を発揮するところに、その根本的な宿命があるわけであります。

 ですから、今われわれ人間にして、人生の意義の何たるかを知らず、したがってまた自己の生涯をいかに過ごすべきかに考え至らないとしてら、本質的には禽獣と、なんら異なるところのないものと言えましょう。