アクセスの多い記事から その7番目~随想 伊路波村から 1~思い出はじめ~

自分の人生を幼少期から現在まで書き留めさせて
いただいた「ある道のり」でした。

最も近い家族、仕事を通じた体験。
そして自分という性向をもちながら、
人生がどのように展開していったのかを
書かせていただいて、はやくもなつかしい思い出と
なりました。

東京の友人からメールがありました。

「別な角度から見た、もうひとつの人生を
書かれたら」 との示唆でした。

自分から見た人生が「ある道のり」でした。

たしかに、身近な出来事を自分はどのように
判断し行動したのか。
さらに自分の心に正直にまっすぐ進んだ結果、
今どこに至ったのか。

今が一番幸せと言えます。

人生の数々の体験や、魂を震わすお出会いに
頭を垂れてひれ伏したく存じています。

お人とのご縁。
そこから生じる体験。
そしてふと行動した結果の出来事。

そのことを書き留めさせていただいて
その言葉によって、もう一つの別な角度から
見た人生を自分も感じてみたい。
そのように肩を押された感があります。

第二部は「随想 伊路波村から」です。

2004年10月26日から書き留めた「つぶやき」「ふしぎ」「なんでも」
の三つのジャンルから抜粋させていただきます。

おつきあいに感謝申し上げます。

第一回 「縁 親鸞天の巻地の巻 吉川英治 著」 20041026

人の縁ほど不可思議なものはありません。
この世に生を受けて五十六年。

出逢った人、別れた人。
たくさんの人に影響を受けて生を活かせて頂きました。
そして現在の己があります。
言いかえれば、今の自分はすべて他人の固まりのようなもの。
初めての出逢いからどのように関わりが拡がるかは
すべて自分次第でしょうか。

初めてこの世でお逢いする方にハガキを書き始めて11年位になります。
それは、ある小節の一説との出逢いがきっかけでした。
故 吉川英治氏著「親鸞 天の巻、地の巻」。
ぼろぼろになった本でした。
聞けば、妻の祖父母が愛読した本とか。
何気なく読み続けているうち、ある一章節に《慟哭》を
余儀なくされました。
「ああ、この感動を初めてお逢いした方々にお伝えしたい」
その一心でお葉書を書かせて頂いています。

御本の一節の文章は、若き日の親鸞(幼名を範宴)が
法隆寺での修行を終えての帰途、伴の者と吉野川の
橋のたもとにさしかかった時の様子から始まります。。

橋を見れば若い女性がまさに今、川に飛び込みそう。
伴の者に指示し女性を押しとどめます。
そして何故にと問います。

女性は「自分の主人が毎日のように女郎屋へ出かけます。
もう悲しくて死んでしまいたい。」と嘆くのです。

家に行って、ご主人に理由を聴こうではないかと、
三人は女性の家に行きます。

戻ってきたご主人に女郎屋に毎日のように出かける
理由を聴きます。

ご主人は答えます。

「小さい頃に別れた妹が今女郎屋にいるのです。
自分が行くことで少しでもお客を取らずにすむのならと
出かけていくのです。」

奥さんは泣いて納得します。

親鸞は何事もよく話し合うことが大切と、二人に
諭します。

親鸞たちを見送りに若夫婦は再び吉野川の橋の
たもとに差し掛かります。

その時に親鸞が語った言葉です。

別れ際に範宴は、悠久と流れている大河の姿を
指さして、若い男女に言った。

「・・・・天地の創造された初めから、水は、天地の終わるまで、
無窮の相(すがた)をもって流れています。

われわれ人間とてもその通り。
人類生じて以来何万年、またこの後人類が終わるまで
何億万年かわからぬ。

その無窮にして無限の時の流れから見ると、
人の一生などは、電光(いなずま)のような瞬間です。

その瞬間に、かうして、同じ時代に生まれ合ったと
いふだけでも実に奇しき縁(えにし)と申さねばならぬ。

いはんや、同じ国土に生まれ、同じ日の下(もと)に
知る辺(しるべ)となり、友となり、親となり、子となり、又
夫婦となるといふ事は、よくよく深い宿命です。・・・・

だのに、そのまたと去っては会い難い機縁の者どうしが、
憎み合い、呪いあい、罵り合う(ののしりあう)などといふ
ことは、余りにも口惜しいことではないか。・・・・・

見るがよい、こう話している間も、水は無窮に流れて、
流れた水は、再びこの宇治の山河に会いはしない。・・・・」

生き方を大きく変化させてくれた一冊の本。

生涯を終えるまでに、あと幾人の方にお逢いできるのでしょうか。

人間の一生は、まばたきの一瞬のようなもの。
だからこそ、逢う人も又逢う人も大切な方です。

出逢いは偶然ではない。
ましてや、共に暮す家族。
共に働く同志。
そして楽しく語らう友人。
仕事を通じての人々。
同じ地域に暮らす方達。
全てがとてもご縁の深い存在です。
己の人生で最高に感動を与えられた本を
紹介させていただきます。