秋の一日

故人とのお別れのときが来た。
もう立派な跡継ぎの板金店さんの息子さんが
棺の亡骸に大声を出しておおいかぶさった。
「おとうさーーん!!」
そして二人の小学生、まだ低学年の男の子が、
横たわるおじいちゃんの顔を見ながら、
おいおいと泣きじゃくっている。
おにいちゃんが、大声で、
「おじいちゃん! ありがとう!」って叫ぶ。
おじいちゃんが大好きだったんだね。
幼いお二人が、死と正面から向かい会う様子を
ずっと見ていた。
出棺の時がくるまで。

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スエさん

「スエさん、死んじゃったよーーー!」といってボロボロ涙を
こぼす父。
「俺がかわりに行けばよかったんだわ。」
しゃくりあげている。
「めずらしいね。」といって家内と顔を見合す。
10月1日、土曜日に帰宅直後の出来事。
スエさんは、町内のステーキハウスの社長さん。
年はたしか75歳にはまだ1-2歳あったと思う。
急な報せにちょっとビックリ。
スエさんの奥さんの方が、病気がちで、
スエさんは看病もっぱらの日々。
とても陽気で、町内でも人気者だったから。

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「一本のえんぴつから」 赤塚仁英様から

一本のえんぴつから
             赤塚仁英  
 2005年8月、スペースシャトル・ディスカバリーに乗り込んだ野口聡一飛行士は、直径1.8㎝、長さ23㎝、重さ200gのオモチャのような小さなロケットを取り出した。
「50年前、日本の宇宙開発史はこのペンシルロケットから始まったのです。」
無重力の船内で、そう話す野口飛行士の手を離れペンシルロケットは宙に浮いた。
かつて水平に発射されたペンシルロケットが、50年後、地上100㎞まで飛行距離を伸ばした瞬間であった。
一本のえんぴつで宇宙へと続く物語を書いた独創の人、その名を糸川英夫という。
 

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