慈雨 慈悲 020510

今日は雨。雨だと時々子供の頃の体験を思い出す。
小学校5年の頃のこと。
人生ではだれにとっても劇的な印象を
与えるできごとがあるものだろうか。
父が家に居なかった、窮乏生活の母と4人の子供。
兄は父親の様なもの。厳しくやさしかった。
大きな自転車の練習を中学校の校庭でしてくれた。
自転車にのることができるようになった。
はじめてのアルバイトが始まる。
Y社の乳酸飲料の配達アルバイト。


一週間の見習い期間を過ぎて、初めて一人で配達に
出かける日。その日は今日のように雨がしとしとと降っていた。
家の近くの箕浦薬局が販売店。
ご主人に送られて店を出る。
100Mほど行った所で、
「ガシャーン。」われたガラスと肌色の飲料水。
「なんてこと、しちゃったんだろう」
おこしたことの重大さは子供の心に痛い。まして少しでも
お金を稼ぐためにしたアルバイトなのに。
「怒られる、怒られる」
簡単にかたづけて、おそるおそるお店へ戻った。
「おじちゃん、ころんじゃった」泣きながら告げる。
「大丈夫か、怪我なかったか?」
おじさんの言葉にポカーンとしてしまった。
40年後、久しぶりに店の前を通った。
「おじさん、いるかな?」
年老いたおじさんの姿がちらりと見えた。
入り口を開けることはできなかった。
ありがとうございます。