旅に出て、平原の風にそよぐすすきを見る。
そこに立つ木を見る。
そして動かぬ巨石を見る。
木の枝や葉は風に揺らされるし、
もちろん植物も揺らされる。
でも石は風に吹かれるだけで、
ずっとそこにある。
私が死んでもそこにある。
そんなことが悲しくて、
涙ぐんだ秋の夕方もあった。
だけれども、よく考えた、つまらんことかも
しれないけれど。
この世に回転していないものはない。
原子一個から、地球や、巨大銀河系まで。
そして無限宇宙でさえ。
だから同じ場所、同じ空間はない。
巨石だって、動いているんだ。
地球に乗って、一緒に旅しているんだ。
そう考えたら、気が楽になった。
石がかわいそうでなくなった。
人間の勝手な思い込みは続く。