日本一の富士山5合目へ!筧初代王者に

富士スバルラインの坂道を必死にペダルを踏む選手(撮影・柴田隆二)
<自転車:第1回Mt.富士ヒルクライム> ◇26日・山梨県富士北麓公園~山梨県側富士山五合目(アスリートクラス25キロ&その他23・3キロ)◇男女10種目◇出走2573人・完走2107人(オープン参加含む)◇午前7時スタート◇曇り◇16・9度◇北北東の風0・5 メートル◇主催 Mt.富士ヒルクライム大会実行委員会◇後援 日刊スポーツ新聞社ほか

 標高差1270メートル、最大こう配約8%の富士スバルラインを登り詰める初の大会をアスリートクラス男子(距離25キロ)にエントリーした筧(かけい)五郎(29=名古屋市)が制した。同女子(同25キロ)は斎藤磨実(27)が制覇。またプロ選手が参考出場した招待男子では別府巧(25=愛三工業レーシング)が、同女子は唐見(からみ)実世子(30)がそれぞれ優勝した。

 派手なポーズはしない。富士山五合目のゴールに飛び込んだ筧は、満足そうに笑った。ゴール前3 キロ まで競り合ったライバルの村山利男(45=新潟・柏崎市)と握手を交わす。「プロの選手じゃないので、仕事をしながら強くなることが目標でした。日本一の山で勝てたのは最高です」と落ち着いて話した。


 名古屋駅に近い喫茶店「コーヒーハウス・カコ」のパン職人として、早朝6時から午後2時までパン焼きがまの前に立つ。その後、濃尾平野の平たん地を1日70キロ走る。午後6時からのディナータイムには再び店に戻り、午後8時すぎまでコーヒーをいれる。天候にかかわりなく10年間、毎月約2000キロをこなしてきた。ヒルクライムは日々の練習の成果を試す場だった。

 この日の富士山ろくには霧が立ちこめ、時折小雨も降ったが、「今日は最高のコンディションだ」と自分に言い聞かせた。スタート直後、プロの招待選手・別府巧が霧の中に消えた。先行を許しても冷静だった。2位集団を形成し、ひたすら五合目を目指す。「遠くまで見えると、あんなに遠くまで走るのか、と気持ちが途切れる時がある。ライバルを見て焦ることもあるので、霧のおかげで自分のペースを守れました」。前日の試走で「勝負どころ」と考えていたラスト約3キロの急こう配に差し掛かると、鍛え抜いた足でライバルを後方に追いやった。

五郎の勇姿

 高校3年生の時、欲しかったバイクの中型免許取得を禁じられた。兄に薦められ、免許取得用に貯金していた10万円で自転車を買った。167センチで67キロと太めの体形だったが、ダイエットのつもりでペダルを踏み始めた。以来、自転車から片時も離れることなく、生活のそして人生の一部となった。今の体重は53キロ。次の目標は、V2達成だ。自分に負けないために走り続ける。

日刊スポーツホームページより抜粋
筧五郎専用掲示板
撮影:筧太一(かこの前にて)