致知出版社 一日一話 読めば心が熱くなる・・ 第二弾 28 「フランクリン 十三の徳目」

 渡邊 利雄 東京大学名誉教授

 ベンジャミン・フランクリンの「自伝」の中に、世界でも広く知られた「十三の徳目」があります。
 フランクリンにとって「十三の徳目」は「道徳的に完璧な域に達しようという、大胆で困難な計画でした。「自伝」にはその実践法が細かに記されています。
 彼はまずこれらの徳目を習慣化するために手帳に表を作り、各徳目についての達成度を厳格に点検していくのです。例えば最初の週は一番目の徳目の「節制」に意識を集中させ、節制に関することは、どんな些細な失敗も目を光らせる。夕方に一日の過ちを黒点で記録する、というものでした。
 一週間で黒点がなければこの徳目は達成、それを確認した上で、次の週は二つ目の「沈黙」に移る。若き日のフランクリンは、このようにして「十三の徳目」を実践しました。
 全部を一度にやるよりは、まずは特定の徳目に注意を集中させ、それを一つずつ広げるのが効果的だという、いかにも合理主義者らしい彼の考え方が読み取れます。

1.節制
 頭が鈍るほど食べないこと、酔って浮かれ出すほど飲まないこと。
2.沈黙
 他人または自分自身の利益にならないことはしゃべらないこと。つまらぬ話は避けること。
3規律
 自分の持ち物はすべて置く場所を決めておくこと。自分の仕事はそれぞれ時間を決めてやること。
4.決断
 やるべきことを実行する決心をすること。決心したことは必ず実行すること。
5.節約
 他人または自分のためにならないことに金を使わないこと。即ち無駄な金は使わないこと。
6.勤勉 
 時間を無駄にしないこと。有益な仕事に常に従事すること。必要ない行為はすべて切り捨てること。
7.誠実
 策略を用いて人を傷つけないこと。悪意を持たず、公正な判断を下すこと。発言する際も同様。
8.正義
 他人の利益を損なったり、与えるべきものを与えないで、他人に損害を及ぼさないこと。
9.中庸
 両極端を避けること。激怒するに値する屈辱をたとえ受けたにせよ、一歩その手前でこらえて激怒は抑えること。
10.清潔
 身体、衣服、住居の不潔を黙認しないこと。
11.平静
 小さなこと、つまり、日常茶飯事や、避けがたい出来事で心を乱さないこと。
12. 純潔
 性の営みは健康、または子孫のためにこれを行って、決してそれに耽って頭の働きを鈍らせたり、身体を衰弱させたり、自分自身、または他人の平和な生活や信用を損なわないこと。
13.謙虚
 キリストとソクラテスに見習う事。