森信三先生の言葉 7~すべて物事は、最上のものは一歩を・・・

 すべて物事は、最上のものは一歩を誤れば、
最下に堕するのが常です。
これは二階へ上がる梯子は、一段目から
落ちたのでは何でもないが、一番上の段から
落ちたら大けがをするのと同じようなものです。
同時にまた、外面的には最下と見えるものの中にも、
内面的には、最高の意義の宿されている場合が
少なくないのです。かくして諸君の前に
置かれている分岐点は、名実共に最下なる
ものに宿るか、それとも最下なるものを
通して人生の最高処に到るか、その何れか
だといってよいでしょう。

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 一人の卓れた人格というものは、決して

生やさしいことで出来るものではありません。
その人が現実生活において嘗めた苦悩の
一つ一つが、その人を鍛えて、その人から
生まなところを削りとってゆくわけです。
すなわち生活の鍛錬が、その人からすべての甘さを
削りとってゆくのです。かくしていやしくも
一道に徹し、一世の人と言われるほどの人は、
必ずや何らかの趣において、この老木の
持っているような精神的な美を、その風格の
上に帯びてくる筈です。