魂の旅 ~ネボ山・イスラエル失われた民族を訪ねて~
モーセロミュロス。40年間にわたって、30万人の民を
従え約束の地をめざした人。
1999年5月。その約束の地エルシャライム(エルサレム)をはるかに
臨むネボ山にたっていた。
故糸川英夫博士の想いと遺骨を届ける旅は、糸川博士の愛弟子
・津のAさんの企画だった。
1948年イスラエルは建国宣言された。初代首相は、故デビ
ッド=ベングリオン。ベングリオン首相の建国の志は、
「荒地を緑の地にかえよう」だった。
そして世界に散りじりになった民族同胞はイスラエル
に戻れと鼓舞し、先住民族ベドウィンの緑地化技術を世界の人
々に教え伝えようではないかと宣言したのである。
この高邁な志に糸川博士は心からの敬意を表し、同時代に生き
ることのなかったベングリオン首相の魂との触れあいの中でイ
スラエルと日本の助け合いなくして、21世紀の地球国家はな
いと言い切ったのである。
1999年2月21日午前3時15分。糸川博士は逝った。ベ
ングリオン首相も糸川博士もよく知らない人々と共に、ベング
リオンご夫妻の眠る墓地で献花した。
何故だかみんな泣いていた。
糸川博士とベングリオン首相がにこやかに笑っているよう
な気がした。
糸川博士は生前、
「ベルバラがわからないと21世紀はみえない」
(?)と言ってみえた。
ベルサイユ条約のことだったのだろうか。
WASP。ホワイト、アングロサクソン、プロテスタントが有色
人種を支配しようという秘密条約。
そのことに最大の抵抗をみせたこの日本という国の過去。
最近の映画『ムルデカ』や『東京裁判』に歴史の真実を知る。
糸川博士の想いは、「国を追われた流民の旅人、
ユダヤ民族と共に大調和を知る日本民族が21世紀の
先導役をせよ。」と訴えているのだろうか。
死海のほとり、マッサダの砦は最後のユダヤの砦だった。
ローマ軍に滅ぼされる前日、全員自決した最後のユダヤの人々は屈辱よ
りも誇りを選択した。現在もこの砦では軍に初入隊する男女の宣
誓式の場として、長くイスラエルの誇りを守っているという。
はるかに約束の地をのぞむネボ山に立ち、聖書物語を思い出して
いた。「ヨシュアよ。私は約束の地を見ることはない。あとはお
まえが民を導くのだ。」といって姿を消したモーセ。その墓は今
も見つかっていない。
人にはそれぞれ約束の地がある。それは場所ではないかも知れな
い。生き方を探求する道につながる約束の地。大きな感動が山上
の風にあおられ、固い決意が生れた。
「何があってもやり抜こう。いのちに正直に生きよう。」
モーセが激しく語りかけるようだった。