「マザーテレサの真実」 五十嵐 薫 著

mather070523.gif
私がこの本を読みながら、むせび泣いているのを
見てか、「その本私にも見せてください。」と娘。
そして本を開いて、ほんのしばらくの後、
彼女は嗚咽した。
お会いしたかったマザーテレサがすでに
亡きあとの「インド心の旅」にお連れいただいた
五十嵐さんが、おそらく全編を通じて、
涙ながらに書き下ろされただろうことだけは
強く心に訴えかけるちからから推察された。
以下は本文の「はじめに」からの抜粋で、
マザーテレサの後継者シスター・ニルマラに
この本を世の中に出してよいかの確認をとる
ために出した手紙のやりとりである。
この本は決してマザーの伝記的な本ではない。
マザーの大きな意識が読むものすべての「いのち」に
語りかけてくるような本だと、ご紹介させていただきます。
           山田


・・・・・前略・・・・
「日本は第二次世界大戦後、不幸のどん底を経験しました。
私たちの父や母は愛する子どもたちの幸せのために、
自らを省みず働いてきました。その結果、どこの国にも
負けないほど豊かな国に発展してきました。
しかしマザー・テレサは日本に来られて、自分の
すぐ側にある貧困を私たちに示してくれたのです。
 学校で、職場で、いいえ自分の家庭の中にあって、
私はこの世に生まれてくる必要がなかったと感じて
いる人が、この豊かな国日本にどんなにいることでしょう。
 私は偶然にも、マザー・テレサが書き残された1993年3月25日に
ベナレスから出された手紙を見てしまいました。真実を知った驚きは、
私の人生を変えてしまいました。
 マザーの手紙を読んで、すぐ側に”I THIRST”(私は渇く)と
叫んでいる人がいることを知りました。今まで自分は何か尊いことの
ために生きていこうと思っておりました。でもそうではない、
小さくてもよいから今すぐ側で”I THIRST”と叫んでいる人、
その人の渇きを癒すために生きることの大切さを知りました。
 どうぞ本当にマザー・テレサの心を伝える本を私に書かせてください。
マザー・テレサのおっしゃっていることはカトリックだけの宝物では
ないと思うのです。本当に神様が望まれることを、自分がどこまで
できるかわかりませんが、どうか神様の一本の鉛筆にならせてください。」
 しばらくしてシスター・ニルマラからいただいた手紙の内容は、
次のようなものであった。
「私たち、神の愛の宣教者会(Missionaries of Charity)は今まで
マザーテレサについて本を書きたいと言ってくる人に対し、その権利を
与えたり、推薦をしてきたことはありません。しかしあなたは神と善良な
市民の栄光のために、私たちのお母さんであるマザー。テレサに
ついて書くことを自由になさってください。あなたの書かれる本が
神の真、善、美のためになって、マザー・テレサのメッセージを
伝える助けになってくださるように祈ります。
2003年9月3日 シスター・ニルマラ」
このメッセージをいただいたとき、この本を出版することに
マザー・テレサがあの世から許可を与えてくださったかのように思えた。
・・・中略・・・・
これからは全人類が宗教宗派にとらわれず、人のいのち(生命)に
仕えるとき、最も自分の生命が輝く「生命の原理」を理解できる
新しい時代になっていくのだと思う。
 それは全ての人が争いをやめて互いに愛し合い、助け合い、
すぐ身近で「自分は必要とされていない」という人に「私はあなたを
必要としている」ことを、自分の体で伝えていくことが望まれる時代である。
 あの小さな体に輝いた巨星が、21世紀を生きる人類の灯火と
なって、永遠に消えることがないように。
    2007年四月          五十嵐 薫