致知出版社 一日一話 読めば心が熱くなる・・ 第二弾 16 「顔の化粧ではなく、心の化粧を」

渡辺 和子 ノートルダム清心学園 理事長

 人間の進むべき道というようなことは、難しくてよくわかりませんけれども、とにかくまずは自信を取り戻すことですね。しかもそれは正しい意味での人間しか持たないぬくもり、やさしさ、強さであり、自分と闘うことができ、自分の欲望にブレーキをかけることができるということへの信頼です。
 例えば、私はいま学生たちに、「面倒だからしましょうね」ということを言ってるんです。面倒だからする。そういう心を学生たちはちゃんと持っています。それは強さだと思うんです。そういう、人間にだけ神様がくださった、神の似姿として作られた、人間にのみ授けられた人間のやさしさと強さ。かけがえのない、常に神様に愛されている自分としての自信
。そういうものを取り戻して生きて行かないと、科学技術の発達するままのこれからの時代に、人間の本当の姿が失われてしまうのではないかと思います。

 いまの学生たちは、ポーチの中にお化粧道具をいっぱい持っています。だから彼女たちには、お金をかけてエステに通ったり、整形手術を受ければきれいにはなるけれど、美しくなるためには面倒なことをしないとだめなのよ、と言っているんです。自分が座った椅子は元どおりに入れて立ちましょうね。落ちている紙屑は拾いましょう。洗面台で自分が落とした髪の毛は取って出ましょう。お礼状はすぐに書きましょう・・・というように、なるべく具体的な行動のかたちで示しています。

 「ああ、面倒くさい、よそう」と思わないで、「ああ、面倒くさいと思ったらしましょうね」と言うと、学生も、何か変な標語のようだなと思いながらも、覚えていってくれるみたいです。

 「人はある程度年をとったら、それ以上きれいにはならないけれど、より美しくなることは出来ます。その美しさというのは中から輝いて出るものだから、自分と闘わないと得られません。お金では買えないのよ」と言うと、「ああ、シスター、顔の化粧ではなくて、心の化粧なんですね」と言ってくれます。