国家破産 その1 ~元気アップ村 村長の部屋~

「国家破産」その1   ~元気アップ村 村長の部屋
白峰由鵬先生から「国家破産 以後の世界」(藤井巌喜著 光文社)の内容を皆さんに紹介するようにとの指示を頂きました。
藤井巌喜さんは1952年生まれの国際問題アナリスト。77年早稲田大学政経学部政治学科卒業、同年から85年までアメリカ留学。クレアモント大学政治学部大学院修士を経て、ハーバード大学政治学部大学院助手、同大学国際問題研究所研究員。現在、株式会社「ケンブリッジ・フォーキャスト・グループ・オブ・ジャパン」代表取締役。何大学か客員教授をつとめ著書は多数あります。


表紙には 「国家破産以後の世界を私たちは、どう生きるべきか?
破産国家の現実 ロシア、韓国、アルゼンチンから何を学ぶべきか?
3流国への転落 アメリカの「経済植民地」か? 中国の「属国」か?
崩壊する社会  サラリーマン人生、公務員人生は今後も続けられるのか?
大増税、インフレ、失業  最後にあなたを救うのは、いったい何か?」
また表紙には、以下の様にも記されています。
「誰も教えてくれない暗黒未来 ・景気回復が国家破産をもたらす?
 -そんな信じられないことがいま、我々の目 の前で現実になろうとしている-
・このバラドックスの説明は簡単だ。景気回復→長期金利上昇→国債の金利払い急増
 →国家破産という因果関係はけっして断ち切れない。
・日本政府がゼロ金利下で安易に国債発行を続けてきた為に、隠れ借金を含む
 国家の債務超過はもう1000兆円を超えている。したがって長期金利が上昇す
 ると、利払いだけで国家財政は即パンクするのだ。
・結局日本は、官僚主義の弊害で第二次世界大戦に負け、いままた同じ理由で
 国家破産に至るのである。
・本書では日本の国家破産は実際、どのようなかたちで訪れるのかをシュミレー
 ションするとともに、より広く世界の情勢を考えたうえで「今後の日本と日本人
 の生き方」を問う。
1.はじめに
国家破産とは我々の暮らしが貧しくなることである。破産以後は失業率が20%を越え、街にはホームレスがあふれ、失業者はお腹をすかして道をさすらうだろう。当然、犯罪は増え街は荒廃する。第二次世界大戦後にあった復興期の街の光景が蘇る。しかし、そんなことはたいした問題ではない。今度ばかりは同じ間違いを繰り返さず、この国を復興させなければならない。国家破産は、日本人が国家に対する愛国心を失った結果でもあるが、それ以上に日本が哲学無き資本主義をやり続け、全てを先送りし、問題解決せずに場当たりで対応してきた結果でもある。 国家破産以後の日本では、思い切った荒療治が行われる。公務員は特権的地位を失い、大幅にリストラされる。国民は財産の一部を没収され、年金もカットされる。また、日本を破産に導いた政治家や官僚などの旧指導層は追放されるだろう。この時、日本の全企業はほぼアメリカの下請けとなり、国家自身も下請け国家となるわけだ。こういう事態を逃れることは出来ない。 しかし、ここから私たちがしなければならないのは、今度こそ本当に独立することだ。その時必要なのが、本当の意味でのサイエンスと愛国心を持つことだ。明治の創業期のように、大きな志を抱いて、21世紀に相応しい未来国家を作り上げなければいけない。果たして、今の日本人に国家破産を受けとめそれを乗り越えて国家を再建する強い意志と志があるだろうか?もしないとすれば、日本はこの先、 永遠に漂流を続け、2流、3流国家として長期にわたって落ちぶれていくだけだろう。
2.見えざる危機
現在の日本の国債の最大の問題点は発行額があまりにも巨大になりすぎて、いつ償還不能になってもおかしくない。今の日本政府は借金を返そうという必死の努力をしていない。ある意味政府は借金を繰り返す麻薬患者といえる。しかし、 長期金利の上昇で政府が国債の利回りを払う費用がどんどん増えて、政府の資金 繰りが挫折することになる。絶対に長期金利を上げてはいけない。金利が上昇して国債が暴落すると国民に劇的なデフレが襲う。高金利のもとのデフレでは、企業は収益性が上がらないのに借金がどんどん増える悪循環に陥る。こうなると体力の無い企業はたちまち倒産してしまい、金融機関も次々に破綻してしまう。その事態になり日銀が国債を引き受けると、市中に大量の紙幣が供給され、今度は猛烈なハイパーインフレが国民を襲うことになる。ここに、財務官僚もお手上げの2008年問題がある。
2008年は国債償還が飛躍的に増大する年である。これは1998年に小渕内閣 が景気対策として国債を連発したツケでこの年の10年物国債は2008年には総計約40兆円の借換え債を発行しなければならない。これはその年の税収に匹敵
する。日本政府は借り換えをしなければ40兆円の謝金返済だけで予算を使い切 ってしまう。そして、恐ろしいことにこの年の長期金利がどうなっているかは誰にも予測できない。
3.三つのシナリオ
国家破産はダイエーの処理と同じでどう破産処理をするかの問題だ。そして、政府の借金は結局国民が払うしかない。筆者が国家破産といってきたのは正確には政府破産で官僚経済部分の破産である。しかし、政府は富を生産しない。
国民に寄生するだけで、結局国民が払うしかない。民が官の尻拭いをする方法は大きくいって2つしかない。
①官が借金を踏み倒す。つまり、政府は国債を返済しない 。②借金は踏み倒さないが重税を課す。その重税で民から搾り取った分を国債の
返済にあてる。 日本国債の97~98%は日本人が持っている。 これはいい事でもあるし悪いことでもある。政府の利払いが国民の手に戻って
くることはいいことだ、しかし政府 が 自国民の犠牲があれば立ち直れると安易にかんがえるとすれば、それは悪いことだ。国家破産が突然襲ってくるか(サドンデス)ゆるやかに襲ってくるか(スローデス) 結末は同じだ。サドンデスが訪れるのは2008年までの間で、この時期を奇跡的に乗り切れても2010年以降に持ち越されるだけだ。スローデスが成立するにはいくつかの幸運が重ならなければ成らない。経済成長による税収の安定、深刻
な小子化のストップ、さらに日本自身が危機をきちんと自覚し乗り越える勇気を持つこと。そしてまともな改革を断行する政治家が現れることだ。
経済だけでなく、もはや日本社会全体が死の病にかかっている。年間自殺者の 増加、凶悪犯罪の増加、フリーターの増加があるが、その向こうには日本人その者の劣化、社会全体のモラルの低下がある。国家破産が起きるとき中産階級が没落していく。フリーターやニートはもともと資産もなくその日暮らしだからどんな状況でも生活レベルは変わらない。高額資産をためた老人層はいくらでも対抗手段はある。しかし、会社勤めで家族を抱え、住宅ローンを持っている一般ビジネスマンは全てを失い中流から下流に転落してしまう。
これを止める方法はない。この層は、選挙は棄権し、会社では上司に逆らってま で改革せず、家庭では子供の教育とお金の管理を妻に任せきりにしてきたからだ。
さて破産処理後の日本はどうなるのか。 シナリオ1.アメリカの経済植民地属国から植民地への転落。優良企業は殆ど買収される。企業も社会もすべてアメリカ化。シナリオ2.中国の属国大中華経済圏の誕生。アジア統一通貨構想。対米従属より怖い対中従属。
シナリオ3.海洋アジアの小国東南アジアとの親和性。日本は大陸と関わると不幸になる。マハティールのルッ
クイーストの意味。アジア3分論と黒潮文化圏。アセアンの1国として存在する日 本。 この構想が日本の行き方としては最も明るいもの。
4.破産国家の例
破産国家の被害は中流クラスほど大きい。
・アルゼンチンのディフォールト
・ソビエト連邦の崩壊、・韓国の通貨危機
・メキシコ経済の破綻