致知出版社 一日一話 読めば心が熱くなる・・ 第二弾 21 「受けた試練は宝玉のようなもの」 

三浦 綾子 作家

 十三世紀のころ。シチリアにフリードリッヒ二世という王がいたそうです。この王は人間はすべて自分の本来の言葉を持って生まれてくる筈と固く信じ、その考えを実現しようとして生まれたばかりの、みどり児を集め。養育係にひとことも話しかけてはならないと厳命した。
 言葉をかけられたことのない赤ん坊たちは、自ら言葉を発することは、むろんできなかったばかりでなく、やがて衰弱していき、ついにはみんな死んでしまったそうです。
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致知出版社 一日一話 読めば心が熱くなる・・ 第二弾 22 「人が育つ三つの条件」

田中 繁男 実践人の家理事長

 森信三先生のお話を生徒の親御さんたちにも聞いてもらいたいと思い、PTAの講演にお呼びしました。
 その時のお話も私の意表をついたものでした。森先生は水差しの水をコップに入れて、つぎのようなお話をされたのです。
 コップは上向きにしないと水が入りません。それと同じで、教育は子供の心を素直にするという受け入れ体制が大事です。朝、起きたら「おはよう」とあいさつをさせる。次に「ハイ」と返事をさせる。それから履物をそろえさせる。子どもにやらせようと思っても難しいことだから、親から先にやる。そして、「これが私の一代の学問の結実です」ということをいわれました。一生かかってやってきた学問の結論が、コップを上向きにすることだと聞いて、私は大変に驚きました。
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致知出版社 一日一話 読めば心が熱くなる・・ 第二弾 23 「お母さんの力」

東井 義雄 教育者

 長崎に、原子爆弾が落ちました時、当時、十歳であった萩野美智子ちゃんの作文。

 雲もなく、からりと晴れたその日であった。私たち兄弟は、家の二階で、ままごとをして遊んでいた。その時、ピカリと稲妻が走った。あっというた時にはもう家の下敷きになって身動き一つできなかった。(大きいお姉さんが水平さんを呼んできて、美智子さんは救出されました。しかし・・・)
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致知出版社 一日一話 読めば心が熱くなる・・ 第二弾 24 「人はその人の性格にふさわしい出来事に出合う」

大島 修治 ジェイ・コスモス代表取締役

 約六年前、私が会社の社長室で仕事をしていると、ドアをノックする人がいました。はい!」と言って扉を開けた瞬間、何者かが私にガソリンをかけ発煙筒を焚きつけました、熱い・・・。燃え盛る衣服を剥ごうとして、私の右手は焼けただれてしまいました。その後、救急車で病院に担ぎこまれましたが、身体の六割以上が焼けてしまった私を見て、医師は、「もう無理です。助かりません」と言ったそうです。しかし、私は悪運が強いんですね。五度の危篤状態に陥り、血圧が二十以下に下がってもまだ生きていました。奇跡的に一命をとりとめましたが、ベッドに横たわり考えるのはいつも死ぬことだけでした。全身焼けただれ、ちょっと消毒するにも金だわしで傷口をえぐられているように感じます。「なぜこんなに俺を苦しめるんだ!いっそ一思いに殺してくれ!!」病院中に私のわめく声が響き渡ることも少なくありませんでした。
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致知出版社 一日一話 読めば心が熱くなる・・ 第二弾 25 「人間は義務だけでは駄目だ」

西村 滋 作家

 ベストセラーとなった自伝的小説「お菓子放浪記」がなぜ生まれたのかについてちょっとお話しますね。昭和十五年の暮れ、孤児院から逃げ出した僕は、おなかがすいてしまって、あるパン屋さんの店先で菓子パンをね、ちょっと失敬してしまったんですよ。お砂糖が配給になって、甘いものがだんだんなくなってくる時代でした。
 ところが情けないことに、その菓子パンを食べる前に刑事さんにつかまっちゃってね。年の瀬を一回だけ警察の豚箱で迎えているんです。ある少年院に廻されることが決まると、僕を捕まえた刑事さんに連れられて目的地まで行くわけですよ。
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致知出版社 一日一話 読めば心が熱くなる・・ 第二弾 26 「どうか主人の遺志を継いでください」

神崎 紫峰 信楽焼陶工

 翌日は、取引先の五十万円の入金を当て込んで、私は当日付けで手形を切っていました。ところが「送金は来月まで待ってほしい」との断りの電話がかかってきたのです。午後三時までに銀行に入金しなければ不渡りです。あちこち駆けまわったものの、これ以上借金を頼めるところがありません。その時、なぜ松田社長のことが浮かんだのか?昨日会ったばかりで、それも無理なお願いを聞いていただいたのに・・・・と躊躇しながらも、結局会社を訪ねていました。
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致知出版社 一日一話 読めば心が熱くなる・・ 第二弾 27 「兄・小林秀夫から学んだ感受性の育て方」

高見澤 潤子 劇作家

 兄に感受性を養い育てるにはどうしたらいいかと聞いた時、兄はこう答えた。
「始終、怠ることなく立派な芸術をみることだな。そして感じることを学ぶんだ。立派な芸術は、正しく豊かに感じることをいつも教えている。先ず無条件に感動することだ。ゴッホの絵だとかモーツアルトの音楽に、理屈なしにね。頭で考えないでごく素直に感動するんだ。その芸術から受ける何とも言いようのないわからないものを感じ、感動する。そして沈黙する。その沈黙に耐えるには、その作品に強い愛情がなくちゃいけない」
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致知出版社 一日一話 読めば心が熱くなる・・ 第二弾 28 「フランクリン 十三の徳目」

 渡邊 利雄 東京大学名誉教授

 ベンジャミン・フランクリンの「自伝」の中に、世界でも広く知られた「十三の徳目」があります。
 フランクリンにとって「十三の徳目」は「道徳的に完璧な域に達しようという、大胆で困難な計画でした。「自伝」にはその実践法が細かに記されています。
 彼はまずこれらの徳目を習慣化するために手帳に表を作り、各徳目についての達成度を厳格に点検していくのです。例えば最初の週は一番目の徳目の「節制」に意識を集中させ、節制に関することは、どんな些細な失敗も目を光らせる。夕方に一日の過ちを黒点で記録する、というものでした。
 一週間で黒点がなければこの徳目は達成、それを確認した上で、次の週は二つ目の「沈黙」に移る。若き日のフランクリンは、このようにして「十三の徳目」を実践しました。
 全部を一度にやるよりは、まずは特定の徳目に注意を集中させ、それを一つずつ広げるのが効果的だという、いかにも合理主義者らしい彼の考え方が読み取れます。
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